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JIPC加盟各社 紹介 第11回 ブルーチップ株式会社

普段利用しているポイントサイトをどんな企業が運営しているのか、気になったことはありませんか? 会社概要や沿革を読むだけでは分からないことも多いはず。そこで、JIPCに加盟している企業を順次訪問、ポイントサービス事業を統括する責任者にスポットを当てながら、他社にない取り組みや強み、社風など、企業の素顔の一端を照らし出してみました。

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ゆりかもめに乗って国際展示場正門駅で下車。ブルーチップ株式会社が営業統括を置く有明エリアを訪ねました。1962年創業という長い歴史と、全国津々浦々に1千万人のアクティブユーザーを抱えるという同社。ポイントに関してもリアル店舗での展開に強みを発揮するのは当然ですが、はたしてネットとの連携はどう取り組んでいるのでしょう? 代表取締役社長の宮本洋一氏と旧知の仲でもあるという社長室長の松浦克幸さんにお話しを聞いた。

<ブルーチップが提供するポイントシステム>

名称未設定

全国共通・無期限有効のポイントシステム。買い物で貯まるポイントを様々な商品に交換可能。

2017-07-07 14.57.15

【松浦 克幸さんプロフィール】

ビーコミュニケーションズグループ株式会社

社長室長

松浦 克幸さん

1952年 東京都生まれ。1976年 早稲田大学社会科学部卒業後、ブルーチップ株式会社入社。営業部門に配属後、15年間に渡り、全国の営業所を一カ所平均1年半のペースで担当。その後、本部勤務となり営業企画部門に従事。さらに経営企画部門を経て、常務取締役に。2015年に定年退職を迎えるが、現・代表取締役社長 宮本洋一氏に請われ、ブルーチップ株式会社を含む、グループ企業3社を束ねるホールディングス会社「ビーコミュニケーションズグループ株式会社」に再入社、社長室長となる。趣味はゴルフ。

【ブルーチップ株式会社概要】

ブルーチップ株式会社

1962年創業

資本金:3億円(払込資本)

代表取締役社長:宮本洋一

従業員数:140名(グループ全体)

会員数:約1千万人(アクティブ会員数)

事業内容:ブルーチップシステムの販売/ブルーチップ総合研究所によるリサーチとコンサルティングのサポート/カタログ及びインターネットを利用した通信販売など

ブルーチップ

http://www.bluechip.co.jp/

――御社は1962年に日本初のトレーディングスタンプ専業会社としてスタートしています。どのような経緯で設立に至ったのでしょう?

松浦 創業オーナーがアメリカに長期滞在していた折、現地で得た交友関係の繋がりでカリフォルニアを拠点にするローカルなスタンプ会社から名前を譲り受け、日本に持ち込んだと聞いています。

――紙のスタンプは現在も発行されているのでしょうか?

松浦 今も発行しています。また、創業当時に発行したスタンプも有効です。これは弊社が自慢にするところですし、財産でもあると思っています。

――現在は紙のスタンプと平行して、ポイントサイトも運営されていますが、こうしたポイントプログラムはいつ頃から展開されているのでしょう?

松浦 20数年前のことで、いわゆるポイントカードからのスタートでした。私と現・代表取締役社長の宮本洋一とで「今後はポイントカードを展開していかないと、我々のような会社は生き残れない」との危機感を抱いて導入に動いたのがきっかけでした。もっとも、当時の弊社はポイントシステムを受け入れようなどという余地を全く持っていませんでした。

――どういうことでしょう?

松浦 スタンプは来店客全員に発行するからリピートに繋がる。そもそも台紙にスタンプを貼って貯めるという行為自体に継続性を誘発する魅力がある。これに対してポイントはまず来店客に登録の手続きをお願いしなければいけない。しかも、発行するのは欲しい人にだけ。つまり固定客にしか行き渡らないじゃないか――当時の社内にはそうした意見が大勢を占めていました。ポイントシステムは既存のスタンプシステムを否定するもの。弊社の事業を侵食する悪いものとして大反対されました。推進派だった私と宮本は相当肩身の狭い思いをさせられました(笑)

――なんとなく想像できます(笑)

松浦 当時はポイントシステムが顧客管理に繋がるなどという発想のない時代でしたから、とにかく目の敵にされました。ともあれ、苛められながらも二人で何とか推進しまして、ほぼ事後承諾のような形で導入させたわけです。今やそのうちの一人が代表取締役社長を務めているわけですからね。あの時の二人の決断がなかったら、はたして今のように会社が存続していたかどうか。ひょっとするとなくなっていたかもしれません。入社以来、最も心血を注いで取り組んできたことは何かと問われたら、この時のことを挙げるでしょうね。

――ご苦労されましたね。当時はいわゆるポイントカードだったわけですね。インターネット化されたのはいつ頃のことでしょう?

松浦 当初はリアルな店舗のポイントしか扱っていませんでしたが、インターネット上でもポイントが貯まるような仕組みができはじめたので、じゃあリアルとネット、双方のポイントを合わせられないかという話になりました。そこで2000年だったと記憶していますが、リアルで付与されたポイントをネットにアップロードできるシステムを開発しまして、特許まで取りました。

――特許ですか? どういうものだったのでしょう?

松浦 まずは商店街なら商店街の何店舗かにビーム・ステーションという機械を設置させていただきました。商店街で買物をしてポイントカードにポイントを付与された消費者は、この機械にカードを通しさえすれば、カードに記録された磁気データがそのままサーバーにアップロードされるという仕組みです。このシステムを最初に導入していただいたのが、神楽坂の商店街でした。神楽坂の商店街で買物をして貯めたポイントを使って、神楽坂の飲食店でビールが飲めたりしました。ブルーチップといえば、以前は全国共通のものでしたが、現在は地域単位。各地域の企業と組んで、その企業の名前でポイントを発行しています。

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ブルーチップの歴史と未来を語る、インタビュー時の松浦さん。

――なるほど、よく分かりました。御社は1962年創業とこの業界では歴史ある企業です。その伝統を継承しつつ、さらに先ほどお話しに登場された宮本洋一社長のキャラクターが反映されることもあるやと思いますが、御社の社風を言い表すとすれば、それはどのようなものになるのでしょう?

松浦 じつは宮本に座右の銘は何かと聞いてみたんですね。答えは「敬天愛人」。西郷隆盛が好んで使った言葉だそうです。ちょっとカッコ良すぎるんじゃないかとも思いましたが(笑)、よくよく聞いてみると、すべての人を平等に愛する天を敬うという意味なのだそうです。自分も私利私欲を捨てて人のために生きていかなければいけないと、宮本がそんなことを言っていたのを聞いて、非常に奥の深い言葉だなと思いましたね。

――なるほど。宮本社長はどんなキャラクターの人物なのですか?

松浦 私とは同期入社でスタートはどちらも営業ということで、私と宮本はよく比較されます。私は営業職の後、いろいろな部門に配属されましたが、宮本は営業一筋。昔から圧倒的な営業力を見せつけていました。いわば、戦車みたいなタイプ(笑)。親分肌ですね。

――松浦さんはご自身をどのようなキャラクターだと認識されていますか?

松浦 どうでしょうね。勘でものを言う感覚派だと自覚しているのですが、人からはよく理屈っぽいと言われます。どうやら自分が思うのと人のそれとは人物像がだいぶ違うようです(笑)。自分では理論より思いつきの方が強いかなと思っているんですが。

――そう言いつつ、思いついたモノをじつはロジカルに検証されているのではないですか?

松浦 そうですね。もしかしたら、そういうことが得意なのかもしれません。自慢ではありませんが、人が言わんとしていることを理解するのは早い方だと思います。以前、会社から出資してもらって暗号の会社を設立したことがあります。その時に独創的な暗号システムを発案した人物に、それがどのような仕組みなのか説明を受けたことがあります。何回か説明を受けた後、理解したかと言われたので、理解したかどうか分からないが、これから僕なりに説明してみるから間違っていたら指摘してくれと言って、一通り説明してみました。彼いわく、ほぼ合っていたとのことでした。その時、僕みたいな人間には初めて会ったと言われました。

――やはり理解力に長けているんですね。ところで、松浦さんはブルーチップの出資で暗号の会社を設立されていたんですか?

松浦 発案者が早逝してしまったので結局閉めてしましましたけど。その意味でいえば、昔から弊社は多角経営を得意としています。現在も関連会社がベトナムで豆腐関連のビジネスを展開しています。

――御社は歴史のある企業なのでどちらかというと保守的な社風なのかとの先入観を持っていましたが、そうではないんですね?

松浦 会社の土台を作るのは“営業”ですが、弊社の営業は各企業のトップへの営業が基本なんです。要するに営業相手はすべて経営者。会社の規模は様々ですが、経営者の方たちから受ける影響は決して小さいものではありません。そうした経験がブルーチップの社風、あるいは企業文化を創る要因になっているのだと思います。ある意味、企業内だけで育んできたのではなく、客先と一体になって築き上げてきた企業風土なんですね。

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会社に設置してあるビーム・ステーションの様子。通常、商店街やスーパーに設置されている。ポイントカードをこの機械に通すことで、その情報がそのままサーバーにアップロードされる。

――なるほど。よく分かりました。では、ここで少し松浦さんのプライベートについても、お話しを伺わせてください。今、プライベートで最も時間を費やしていることは何ですか?

松浦 これはゴルフですね。昔からちょろちょろやっていましたが、50歳を過ぎてから競技として取り組むようになりました。今でこそ競技にはなかなか参加できなくなりましたけど。

――本格的ですね。ゴルフを始めた動機は? 営業先との付き合いに必要だったからというようなことはありましたか?

松浦 始めた動機はまさにそれです。会社にはほとんど出社せず、いるのはいつも芝生の上というお客さんも珍しくありませんでしたから(笑)。ゴルフができないとお客さんと話す機会すら得られないので、始めたのは確かです。

――カルチャー面はいかがでしょう。最近、記憶に残った本とか映画などはありますか?

松浦 本は読む時はまとめて読むんですが、最近はあまり読んでいませんね。ただ、芥川賞などが発表されると、文藝春秋の掲載号を買って読むようにはしています。あと、最近考えさせられたのが、マイケル・サンデルの「これからの『正義』の話をしよう」です。今のような市場第一主義だけでいいのかという問いかけがあって、それは自分の仕事でもしばしば頭をよぎることなので、とても考えさせられました。

――なるほど。では、再度仕事の話に戻ります。現状抱えている課題と将来の展望を教えてください。

松浦 ポイントを貯めて交換するという仕組みはきちんとできていると思います。そこを踏まえ、これからは顧客の情報管理と活用が大事になってくる。しかし弊社はその情報を使い切れていないというのが現状ですね。ネット系の場合は過去の履歴が取りやすいし、ABテストのような仕掛けもやりやすい。しかし、我々のようなリアルをベースにした仕組みだとなかなか難しい。しかも、売っているものが食品で、特別なものではないんですね。買っている人たちも主婦が中心になるので、自分だけでなく家族の分まで購入するわけですから、パーソナルな志向を分析しようと思ってもできないわけです。そのあたりの情報の処理をどうするかが大きなテーマだと思っています。

――ネット系のポイントビジネスとは事情がかなり違いますね。

松浦 規模が規模なので、データはたくさん集まってきます。しかし、我々のビジネスモデルは基本がスーパーマーケットです。そのエリアの世帯数のほぼ100%近くが来店されています。我々のデータによれば、だいたい会員の90数%が1週間で来店します。平均すると月に5回ぐらい来店される。つまり、何か告知したいことがあれば、1週間店頭に掲示するだけで、そのエリアのすべての世帯に伝わる計算になる。ある意味、メディアでもあるわけです。そのような特殊な事情を含めて、我々にしかできない独自の情報分析、情報活用をしていく必要があると思っています。

――では、最後の質問です。今後について、個人的な展望はありますか?

松浦 個人的には生涯現役でいたいと思っています。年を重ねたからこそ抱く興味の対象があるのも確かです。先日、脳の研究者とお話しする機会がありましたが、脳は単に老化するのではなく、使わなくなった脳が老化するのだと。つまり、使っていない脳を使わなくてはいけない。それにはこれまでやったことのない対象に取り組むのが良いとのこと。さて、何をしよう(笑)と思案しているところです。